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人事評価

360度評価の失敗例!招くリスクや成功のための5つのポイントを解説

近年、360度評価を取り入れる企業が増加しつつあります。しかし、必ず導入に成功するとは限りません。失敗する可能性もあることを認識しておきましょう。

本記事では、360度評価の失敗が招くリスクに関して詳しく解説します。失敗する原因や、成功させるためのポイントをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

360度評価の失敗が招く3つのリスク

以下、360度評価の失敗が招く3つのリスクをご紹介します。

1.1 従業員のモチベーション低下

目的が不明確なまま360度評価を導入し、評価基準が曖昧な状態で実施して、結果のフィードバックが不適切な場合、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。

従業員の意欲低下を招かないためには、目的や評価基準を明確化したうえで実施し、評価結果を適切にフィードバックすることが大切です。

1.2 社内コミュニケーションの悪化

360度評価では、直属の上司だけではなく、同僚や他部署の人材も評価者となり、評価を実施します。

評価結果によっては、人間関係が変化する場合があることにご留意ください。評価を受ける側が評価内容に不信感を抱くと、コミュニケーションの障害になるでしょう。評価者側は、「公正な評価」を実施するように心がけなければいけません。

1.3 評価制度への不信感

公平性や透明性が欠如していると、評価制度全体の信頼が損なわれます。例えば、公平性・透明性に欠ける状態で評価を実施すると、「会社に貢献したメンバーの評価が低く、あまり貢献していないメンバーの評価が高い」という結果になるケースがあるかもしれません。

その場合、貢献度の高いメンバーが「まじめに業務に取り組んでも仕方がない」という気持ちになり、仕事に対する情熱が失われてしまい、組織全体に悪影響が及ぶ可能性があります。

360度評価の失敗例

ここからは、360度評価の失敗例を3つご紹介します。

2.1 目的の不明確さ

360度評価は、従業員の業務遂行に関する態度や能力、成果などを客観的かつ公正に評価して人事管理の基礎資料とし、能力の育成を図り、企業の成長につなげることを目的として実施するべきです。評価の目的が不明確なまま、漫然と実施していると、組織のパフォーマンスが向上しません

経営者が「何のために評価を実施するのか」を理解しておらず、評価者に対して事前に研修を実施していない場合、目的が不明確になるでしょう。

2.2 評価基準の曖昧さ

明確な評価基準がない場合、評価結果が評価者の主観・感情に左右される可能性があるのでご注意ください。ただし、評価基準の設定は簡単なことではありせん。とくに「異職種が混在する企業」や「医療関係(医師・歯科医師など)」に関しては、どのような評価基準を設定すれば平等・公平な制度になるのかを判断しにくいでしょう。

制度の仕組みだけを形式的に把握した状態で、自社に無理矢理導入すると、基準が曖昧になってしまいます。重要なのは、自社の置かれている状況や社風などを深く理解したうえで、制度の実施が自社のメリットになるように組み込むことです。

2.3 フィードバックの不足

360度評価を実施したら、フィードバックを実施する必要があります。適切なフィードバックがない場合、被評価者が課題を正確に認識できず、パフォーマンスの改善につながりません

なお、フィードバック面談の前に、面談シートを作成し、評価者が伝えたいことや聞きたいことの漏れがないように準備する必要があります。準備しないまま漫然と面談を実施すると、フィードバック内容が不充分になるのでご注意ください。

360度評価が失敗する原因とは?

以下、360度評価が失敗する原因を3つご紹介します。

3.1 経営陣の理解不足

まず、360度評価が失敗する原因として、経営陣が内容や目的を十分に理解していないことが挙げられます。360度評価の本質や重要性を理解しないまま形式的に導入すると、上述したように、従業員のモチベーション低下や社内コミュニケーションの悪化、評価制度への不信感を招きかねません。

改善方法としては、外部の「人事のプロ」に研修を実施してもらって、経営陣が360度評価への理解を深めることが挙げられます。

3.2 従業員への説明不足

従業員に対しての説明が不足した状態で、拙速に360度評価を導入すると失敗する可能性があります。

360度評価では「好き・嫌い」といった主観・感情を排して評価を実施しなければいけませんが、説明が不充分なまま導入すると、評価者の主観・感情によって評価結果が左右されることになりかねません。事前に評価者に対して研修を実施し、心構えをレクチャーしましょう。

3.3 運用の複雑さ

360度評価では、直属の上司だけではなく、同僚や他部署のメンバーなども評価者になるため、運用が煩雑化することにご留意ください。

大企業の場合は、人事部が設置されており、人員も豊富なため、360度評価にも対応できるでしょう。しかし、中小企業では、人事部を設置していないケースも多いのではないでしょうか。その場合、簡素化するために、「評価項目を絞り込む」「運用を外注する」といった対応を検討しましょう。

360度評価を成功させるための5つのポイント

以下は、360度評価を成功させるための5つのポイントです。

  1. 明確な目的と評価基準の設定
  2. 社員への丁寧な説明と理解促進
  3. 評価者の適切な育成と研修
  4. 効果的なフィードバック方法の確立
  5. 継続的な制度の見直しと改善

各ポイントについて詳しく説明します。そのうえで、制度構築に関して注意するべき点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

4.1 明確な目的と評価基準の設定

まず、明確な目的と評価基準を設定してください。中小企業の場合は、人事部を設置していないケースもあるため、大企業のような「役職・部署ごとに細かく評価基準を設定した一覧表」を用意するのではなく、項目を極力抑えた評価基準を設定し、評価シートを作成しましょう。

評価シートの点数の付け方は、「A~C」や「1~5点」など、簡素で分かりやすいものにするべきです。

4.2 社員への丁寧な説明と理解促進

単に評価シートを作成しただけでは、360度評価は成功しません。研修や説明会を実施し、360度評価の意義や方法を従業員に伝えましょう

なお、「主観・感情に左右されず、客観的に評価すること」を説明してください。

4.3 評価者の適切な育成と研修

360度評価では、直属の上司だけではなく、同僚や他部署のメンバーなど、さまざまな関係者が評価者になります。つまり、多数の人員が「評価する側」になる可能性があります。公平で効果的な評価を実施するために、評価者に対しての適切な育成・研修体制を整備することが重要です。

中小企業では、人事部を設置していないケースも多いのではないでしょうか。その場合は、総務部などが研修を実施するか、外部の「人事のプロ」に委託することもご検討ください。

4.4 効果的なフィードバック方法の確立

効果的なフィードバック方法を確立することも、360度評価を成功させるうえで欠かせません。

評価結果を建設的に伝えるために、フィードバック内容をまとめた「面談シート」を面談前に作成しておきましょう。評価者が伝えたいことや聞きたいことの漏れがないようにしてください。

4.5 継続的な制度の見直しと改善

360度評価制度は、「導入したら、それで完了」というものではありません。継続的に実施方法を改善していく必要があります。

なお、改善する際には、PDCAサイクルを回しましょう。PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」という4段階のプロセスを順番に繰り返すことで施策を改善する手法です。

4.6 制度構築の注意点

形式的に制度を導入するだけでは、効果が出ないどころか、かえって逆効果となり、従業員に不満が蓄積するおそれがあります。

評価制度は、各会社の事情(カルチャーなど)を考慮したオンリーワンの内容にしなければいけません。会社が置かれている状況や社風を加味して制度を構築すれば、360度評価によってパフォーマンスが改善され、結果的に売上が増加する効果を期待できます。また、上述したように「作ったら、それで完了」というものではなく、その後の運用も重要です。

「ノウハウを有する人材がおらず、リソース的に社内では整備・構築・運用が難しい」と感じる場合は、「人事のプロ」に外注することも選択肢のひとつとしてご検討ください。

まとめ

360度評価とは、直属の上司だけではなく、同僚や他部署のメンバーなど、さまざまな関係者によって多面的に評価を実施する仕組み・制度です。近年、360度評価を導入する企業が増加傾向にありますが、漫然と導入・運用すると、失敗する可能性があるのでご注意ください。

360度評価を成功させるためには、「明確な目的と評価基準の設定」「社員への丁寧な説明と理解促進」「評価者の適切な育成と研修」「効果的なフィードバック方法の確立」「継続的な制度の見直しと改善」の5つが必要です。

なお、「人事部を設置しておらず、人員的に社内で制度を構築・運用することが難しい」と感じる場合は、「人事のプロ」に外注することも検討しましょう。